日常を笑うファインダー/AKIPINとSACHIKO(AKIPINの妻)

2020/12/062002年作「吾輩はモノである」/AKIPIN

いま39歳のぼくが20歳くらいのころ、人に読んでもらうことを意識した日記をウェブサイトで更新していたのだけど、その中でめずらしく「物語」を書いたことがある。よろしければ、いやよろしくなくとも、どうせもうこんなページまでやって来たんですから、ご覧ください。

<吾輩はハサミである>

このペン立てに配属されてもう1年くらいたつ。ちょうど1年かもしれない。明日、サインペンに聞いて確かめてみよう。カレンダーへの書き込みの発注はたいていあいつに来るから日にち関係には詳しい。去年定員オーバーでぼくと入れ替わりで奥の部屋に出向になった筆ペンのおっさんは元気にやっているだろうか。あのときすでに毛髪がかなりの「みだれ髪」になっていたので心配だ。
今日は何年かぶりの段ボール仕事で、とても疲れた。しかも分厚い部分を切れなかったとき、どこかから散髪用の銀色のはさみを持ってこられたのは屈辱だった。あんなモヤシっ子の温室育ちに段ボールを切られてたまるか。しかも取っ手からヒョイと伸びたあの部分は何なんだ。寝グセか。どうしても必要か。あれにちゃんと指を添えて段ボールに立ちむかっていったあの男もあの男だ。そんで結局裁縫用のはさみ使うなら初めからそっち使え。しかもなぜかおれの股をフルに開いて5時間も放置するし。今日は本当に疲れたからサッと寝る。明日はせいぜい、ひも切りくらいですみますように。久しぶりに折り紙仕事とか来ないものかなぁ。間違ってもドライバー代わりのネジ締めなんかは来ませんように。



<吾輩は輪ゴムである>

今日はマジでキレかけた。冷蔵庫の横のフックを出発して男にどこかに連れられ、輪の中に何を入れられるのかと思ったら、カードの束が入ってきた。かつて食べかけのお菓子の封をしていたときに見た、なんとかチップスのおまけカードだ。「野球」とかいうやつとか、もっと大きな球を蹴るやつとかのチップス。それが何ッカーというのだったか忘れたが、とにかく、カードになったスポーティなおっさんたちが輪に飛び込んできたのだ。びびった。カード1枚の縦より、束としての高さのほうが長かったのは、ちょっと貯めすぎ。とりあえず普通に囲ってみると、おれの小柄がさいわいしたのか、おっさんたちのかたまりにフィットした。しかしここで驚いた。あの男、不満げなのだ。(固定が弱いな・・)とでも思ってるのか、明らかに目が、2周目をうかがっているのだ!2周はムリ!キレるぞ!そう思う間もなく思いきり引っ張られてひねられ、カードたちをガッチリ2重に囲わされた。マジでキレかけた。伸びてるときのおれ、めっちゃ細くなってた。色もなんか薄ーくなってた。キレかけた。でも、こうして頑張ってピン!と張ってる自分が「頑張ってる」って感じでちょっと誇らしかったりもするんだ。
そういえば昨日、赤い輪ゴムがキレてた。ただのゴムひもになった。チャラチャラしてるヤツは弱いな。理由は知らんが。やっぱり輪ゴムといえばおれの色でしょう。理由は知らんが。



<吾輩はハンカチである>

今日はローテーションどおり、棚で待機だったので、懸案だった「ハンカチくわえ」について考えた。トイレで用を足したあと手を洗う前におれを取り出して口でくわえる、というオッサンに多い「ハンカチくわえ」には、ポッケが濡れないというメリットがある。濡れた手をポッケにつっこむと絶対濡れるからポッケが。この合理的に見える行為に今日、実はすごいデメリットがあることに気づいた。入室→小便→ハンカチ取り出し→くわえ→手洗い→手拭き→ハンカチ収納、というかなり地味なフローチャートの2&3番目において、なんと、「洗い落とすべき手の汚れ」がおれにダイレクトに付着しているではないか。そして4番目で、そんなおれを口に・・・!なんとスムーズなパスワーク。このうえなくトントン拍子な不潔。やばいぞ人間。
それはそれとして今日、同期のガーゼから、「ハンカチおとし」なる遊びの話を聞いた。物知りな彼でも深くは知らないらしいのだが、なんでも、「ハンカチを持ちながらくるくる回る」らしい。なぜ回る?その場で?さらには、「落としても何食わぬ顔をする」らしい。なぜ落とす?そしてなぜそんな顔を?!全くイメージがわかない。ガーゼいわく「おそらく、手に力が入らないほど目が回るという苦難にいかに動じないかを競う、2人くらいでやるゲーム」ということだが、暗いな「ハンカチおとし」。競えるのか?人間のすることはよくわからん。これにだけは使われたくない。


 
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