くらしのははは Instagram/@kurashinohahaha

2021/02/24くらしのははは Instagram

くらしのははは Instagram

自分の身体の管理のために「体組成計」を買うべく、Amazonを開く。メーカーは"TANITA"か"OMRON"と決めていた。こういうものは多少値が張っても信頼できるメーカーのものを買う。「どこやねん」みたいな見知らぬ安いメーカーに飛びついて後悔した人を過去に数人、1年前の自分や3年前の自分や5年前の自分、2ヶ月前の自分などを知っている。これまでAmazonで買ったもののぼくに捨てられたり干されたりした物たちの亡霊を背負いながら、丁寧に〈TANITA 体組成計〉と検索する。それだけでもかなりの商品数が出てくるので、価格を軸に、基本スペック、デザイン、データ連携性、レビュー、中でも信憑性あるレビュー、誤字のあるサクラっぽいレビュー・・あらゆる情報を秒速で頭に取り込んでいき、"最適解"を追い詰めてゆく。こういうことに関してぼくはほんとプロ並だなとつくづく思う。でもそんなプロ界はない。そしてこんなことが得意な自分が嫌いだ。以前にスポーツマンの後輩が、「買い物は直感ですね、車とかも」と言っていた。画家の友人が「すべての元凶であるクレジットカードは持たないことにしてる」と言っていた。頭の49%でそれらに心惹かれながら、51%で比較検討は進んでゆく。理想の自分は49%のほうだけど、今は便宜上振り払い、比較検討を進めてゆく。検討すればするほど、体組成計の新たな地平が広がってゆく。結局は100%のぼくがゆく。そして25分後。ぼくのショッピングカートには体組成計が1つ入っていて、そのメーカーは"HIFUMI"。機能のわりに安かった。ひふみ。だれやねん。そう感じつつも確定しようとするぼくの指を、不意に何者かが掴む。亡霊たちだ。ぼくは我にかえり、あわてて"HIFUMI"をカートから削除する。危なかった。また値段に飛びつくとこだった。亡霊たちが、新たな亡霊を生まないよう助けてくれた。ありがとう亡霊たち。ありがとうUSB式ホットアイマスクたち。ぼくは初心を思い出して比較検討してゆく。そして35分後。ぼくのショッピングカートには体組成計が1つ入っていて、そのメーカーは"MASARU"。だれやねん。まさる。だれやねん。翌日届いた"まさる"は、保証書の電話番号が携帯電話だった。

 
ページの最上部へ