日常を笑うファインダー/AKIPINとSACHIKO(AKIPINの妻)
2019/09/09器と私 その2/SACHIKO
京都には有名な「手づくり市」がいくつかある。
手づくり市の元祖?といえるのが毎月15日、京都市左京区知恩寺で行われている、「百万遍さんの手づくり市」と呼ばれている手づくり市。
この手づくり市には昔、伯母夫妻がアケビの蔓で編んだ籠や、手芸小物などを出店していたこともあって、親近感がある。
私も数回、友人と手作りお菓子やジャムを出店したことがある。
もう10年以上前の、新婚間もないころに出店したときのことをふと思い出した。
秋めいて、ひんやりした早朝。
友人が青いプジョーでマンションまで迎えに来てくれた。
当時わが家にマイカーはなかったし、誰かの車でどこかに行くなんて、ちょっと大人の気分がした。
(といっても三十路前で、十分大人だったけど。あぁ、いまどき「三十路」なんてあんまり使わない?「アラサー」っていうのかな?)
前日から仕込んだパウンドケーキやラスクを車に積んで、私は、自分のお店を出せる感覚に心躍らせた。
その日、お店に並べたお菓子やジャムは、ありがたいことに完売した。
それから数ヶ月後。
私の携帯電話に、知らない番号から着信があった。
おそるおそる出てみると、女性の声で、
「あのー、手づくり市でパウンドケーキを売られていた方ですか?」
手づくり市に出す食品は、販売者の電話番号等、連絡先を記入する決まりになっていた。
私は携帯電話番号を、適当なシールに、ハイフンもなく、シンプルに数字だけ記入して、パッケージ裏に貼り付けていた。
その女性は、それを見て電話をかけたとのことだった。
「あ、はい、そうです、出店していた者ですが・・・」
私はドキドキした。
手づくり市で販売したお菓子は、ただ単に自分が好きで趣味で作ったお菓子だ。
私はお菓子のプロでもなんでもない。
何か問題があってクレームがきたのかもしれない!と。
すると、私のドキドキに反して
「あー!よかった!」
と明るい女性。
そして、予想もしなかった言葉がとんできた。
「あのー、ケーキ、発送してもらうことできますか?」
「えっ?あ、あの、あれは趣味で作ってあの手づくり市で販売しただけで・・・ふだんお店をやっているわけではないんです・・」
「あぁ・・そうなんですか・・・」
残念そうな女性の声。
「あ!でも、お作りすること、できますよ。私の趣味のケーキでよかったら、送らせていただきます!」
私はそう答えて、後日、パウンドケーキを焼いてその女性へ送った。
その後、その女性からお手紙が届いた。
<四国から訪れた京都の手づくり市で買ったあなたのパウンドケーキが美味しくて、また食べたくて・・。パッケージ裏に書かれた番号がお店の番号かな?とイチかバチかでかけてみた次第です。ほっとするような優しい味わい、この味、この味だ!と、家族で喜んでいただきました。>
私はとても嬉しかった。
自分の作ったお菓子が誰かに喜んでもらえたことが。
とっ!
今回の題名は「器と私 その2」でしたよね。
全然、器の話にたどり着きませんね。
あと少しでたどり着くのですが・・。
今日はこのへんで。
続きはまた今度。
ほなまたね。


家でもときどきジャムを作ってビン詰めして、友達にあげたりしている。
(PHOTO by AKIPIN)